【書評】ながい坂(山本周五郎)

レビュー
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春。

それは新しい道を歩み始める季節ですね。

新しい学校、新しい会社で新しい生活を始める人も多いのではないでしょうか。

 

今回紹介する山本周五郎の小説『ながい坂』は、そんな人生の節目の時期に読みたい小説です。

 

 

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ながい坂のあらすじを簡単に紹介

小説の舞台は江戸時代の架空の藩です。

主人公の阿部小三郎は、平侍という武士の中でもかなり低い身分の家に生まれます。

 

8歳のあるとき、いつものように父と釣りに出掛けると、いつも通っていた橋が何者かに壊されていました。

しかし父はおろか、藩の誰もがそれについて非難したり声をあげたりしません。

 

8歳の小三郎は決意します。

あった橋を毀して取り払う、などということが平然とおこなわれ、それを非難するものが一人もいない、ということは誤りだ、――そんなことが公然と黙認されないような世の中にしたい

 

そこから文武に努力を重ね、主君に認められて抜擢を受けますが、妬みや嫉みを受けたり、政争に巻き込まれて不遇のときも過ごしつつ、藩の改革に向けて奔走していくという物語です。

 

最終的に主人公の小三郎(いろいろあって名前は三浦主水正になりますが)が38歳になるまでが描かれますので、足掛け30年間の物語です。

 

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ながい坂から学んだこと①:自分で決断したからこそ苦難も乗り越えられる

主人公はさまざまな苦難に遭遇し、心が折れそうになることが幾度もあります。

 

たとえば主人公は政局の変化で政敵に命を狙われてしまい、藩の端にある荒地で農民に姿をやつして開墾作業に従事しますが、状況の変化の見えなさに心が折れ欠けます。

開墾の仕事は辛くて困難だ、と主水正はなお思った。けれどもおれには初めての経験だ、尚功館へ入学して以来、他の人たちとは違ういろいろな、新らしい経験をしてきたが、いま思い返してみて、これがむだだということは一つもなかった、こんどの仕事も徒労である筈はない、一坪の笹原を切り拓くことだけでも、充分に意義のある仕事だ。
主水正は眼がさめたような、新鮮な気持ちで、自分がしっかりと新畠に立ち向かうのを感じた。

 

この他にも何度も心折れかける場面があるのですが、「自分で選んだ道だろ」と鼓舞して立ち上がります。

 

これが人に言われて選んだ道だったらどうでしょうか。

 

「親が大学行けって言うから」

「課長がやれって言ったから」

 

そんなにがんばれないですよね。

 

逆境に耐えられる強さは、自分の人生は自分が描いてきたんだと思うところから生まれるということを学びました。

 

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ながい坂から学んだこと②:どう生きるかで人は形づくられる

一人の男の人生の30年間を描いた小説ですので、いろんな種類の登場人物が出てきます。

重要な人物もいますし、飲み屋でワンシーンだけ出てくる名もなき人物もいるのですが、ほんとうにさまざまなタイプの人種が現れてきます。

 

そして最も印象に残っているのは、主人公の少年時代の恩師である谷宗岳と、城代家老(藩主に次ぐナンバー2的なポジション)滝沢主殿の対比です。

 

谷宗岳はみじめに老い衰えていた。後頭部に灰色の髪が少しあるばかりで、頭はすっかり禿げているし、黒っぽく乾いてちぢかんだような手足も、顔も、ひと押しすれば折れるか、ばらばらに砕けてしまうようにみえた。
――これはもう谷先生ではない。
ここにいるのはおれとは無縁な人だ、主水正は思った。滝沢主殿も老衰はしていたが、やはり滝沢主殿その人に変りはなかった、だがこの人は違う、この老人はかつて谷宗岳であったが、いまはおれの見も知らない人になってしまった。

 

これは主人公が大仕事をやってのけた晩に、谷先生が主人公の家に酒代をせびりにきたシーンです。

若い時分は藩の名士であった二人が、その後の過ごし方で全く異なる晩年を過ごすことになるシーンが印象的でした。

 

そもそも、主人公も身分は低い生まれですが、8歳時の決意を胸に努力を積み重ねて抜擢を受けていきます。

 

おそらく作者である山本周五郎の人生観が表れているのだと思いますが、
生まれや才能よりも日々の過ごし方が人間を形づくるのだ、ということを感じます。

 

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最後に

この他にも、作中ではいろいろな登場人物がいろいろな人生を送っており、それぞれ深イイ言葉を発しています。

これは「ながい坂」に限らず、山本周五郎の作品に全体的に見られる特徴だと思います。

 

歴史小説、しかも文庫版で上下巻あわせて1000ページ超という大作ですが、歴史の知識がなくてもすらすら読めますし、しばらく読んでいると一気に引き込まれていくこと間違いなしです。

 

良き人生のお供になること間違いなしな一冊だと思います。

 

 

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