メーカーに技術系で入社すると大抵の場合、「現場に学べ」ということで現場実習があるのではないでしょうか。
筆者もメーカーに新卒で入社し、本社で1か月くらい研修を受けた後、工場にて約3か月間の現場実習を経験しました。

ちなみに筆者は一般には「ホワイト」と呼ばれる大手メーカーに新卒入社したよ
これからメーカーに入社して現場実習に向かう後輩諸君にとって少しでも役に立てばという気持ちで、そのときの経験談を紹介します。

まあ現場実習の感想を一言で表すならば「しんどい」ですかね
ちなみに本記事のような実際に体験した人にしかわからない経験談は、転職サイトの口コミでも読めたりします。
たとえば大手転職サイトのキャリコネに無料登録すると、求人を出している企業の口コミを検索して読むことができます。
それでは絶望の幕開けです!
地方工場へ配属~工場現場実習までの道のり~
入社して1か月。
就業規則や社会人としてのマナーなど一般的な新入社員教育を受け、4月末に出た辞令は「田舎工場への配属」だった。
同じ工場の辞令が出た同期2人と共に田舎工場へ向かう筆者。
道中に広がる景色は田んぼばかり。
「とんでもないところに来たな…」と思わざるをえない。
その日は移動のみでほぼ1日つぶれたので、あいさつ回りのみ済ませて寮へ移動した。
寮の周りも広がるのは……そう田んぼばかり。
「とんでもないところに来たな」と再び思うのであった。
翌日からは約1か月の研修。
今度は工場内のいろんな課を回って、工場全体がどんな操業をしているのかを学んだ。
いま思い出したが、この1か月間の研修では「工場が抱える課題のうち1つをピックアップして、その解決方法を考えて、最終日にプレゼンする」みたいな宿題が与えられた。
後半2週間は土日返上で寮の食堂にて同期3人力を合わせて課題に取り組み、寮に住んでいる先輩もいろいろ親身に指導してくれたが、いま思えば仕事を家に持ち帰ってやらせるとんだブラック企業だ。
そんなプレゼンも無事終わり、同期3人はそれぞれの配属課に分かれてOJTを受けることになった。
筆者は生産部隊の配属だった。
生産部隊に配属された技術系総合職は、1,2年目はR&Dに取り組んで生産効率やコスト削減に取り組み、3,4年目はライン管理を担当するというのが当時の流れであった。
しかしR&Dに取り組むにも、ライン管理をするにも、「生産現場でどんな作業が行われているか分からないと仕事にならないだろう」ということで、新入社員には約3か月間の現場実習が課せられていた。
この現場実習とは、現場のオペレーターが毎日行っている作業を、筆者もオペレーターの一員として毎日こなすというものである。
当然夜勤もある。
毎日、現場の詰所に出勤し、現場リーダーの指示や指導を仰ぎ、作業着&保護具に身を包みながら汗を流す日々が始まった。
工場現場実習の感想
現場実習が始まった。
とりあえず作業リーダーの後ろをずっとついて、いろんな作業を経験した。
当然すべてが初めてやる作業だ。
フォークリフトやそのほか特殊な機械にもいろいろ乗った。
知らないことだらけで、そうした知らないことを知っていくのはおもしろかった。
けどきつい仕事もいっぱいあった。
夜勤で工場内の排水溝の掃除を担当したときはしんどかった。
体力的にもきつかったのだが、深夜に蛙の声を聞きながら汗だくになってドブさらいをしていると、
「これが本当に将来役立つのか…」
「同級生でこんなことしてるのは俺くらいだろうな…」
と精神的に参った。
ちなみに、ドブさらいをきっかけに購入して今も愛用しているのがチープカシオの腕時計だ。
就職祝いに貰ったポールスミスは、毎日泥だらけ&汗まみれ&油汚れで実習2日目からつけていくのをやめた。
このチープカシオの腕時計は1000円で買え、しかも防水・防塵なので、汚れを気にせず使える。
工場現場実習の闇~方言がわからない~
一番しんどかったのは、言葉がわからないことだった。
方言がきつくて、何を言っているのかがわからないのだ。
イメージはこんな感じだろうか
今でこそこんな風にネタにしてツイートしてるが、当時は本当に何を言ってるかわからなかった。
地方配属された新入社員へ送るグローバルエリート()あるある
英語を使うどころか、地元民がしゃべる日本語がまずわからない。
まずは方言のリスニング強化から始めような!
— かまぼこ@転勤族リーマン (@kamabocooo3) September 30, 2019
方言リスニングをさらに難しくしているのは保護マスクだ。
マスクで音がこもってしまい、さらに何を言っているのかわかりづらくなってしまう。
もはや「何か言ってるなぁ」くらいしかわからないレベルだ。
こんなことがあった。
現場に行った最初の日。
筆者と作業リーダーが作業をしていると、途中から別の作業員の人(Aさん)が応援に来た。
しばらくするとAさんが筆者に向かって何か言った。
しかし何を言ってるのかわからない。
聞き直してみると、もう一回同じようなことを言った。
前回と同じようなことを言っているのはわかるが、何と言っているのかはわからない。
勇気を出してもう一回聞き直してみた。
今度はマスクを外して話してくれた。
けどやっぱりよくわからない。
さすがにこれ以上聞き直すのは失礼かなと思い、なんとなくの雰囲気をくみ取って作業を再開した。
すぐに怒られた。
おもしろいもので、怒られたときは何と言ってるのか大体わかる。
人間の危機本能なのか、はたまた怒られるまで筆者の真剣味が足りなかったのだろうか。
同じ日本でも言葉が通じないということがあるのかとカルチャーショックであった。
工場現場実習の闇~レポート地獄~
さらに追い打ちをかけたのがレポートだった。
研修中は毎日レポートが課されていた。
それも手書きでA4×5枚。
なぜか実習中は残業禁止だったので、家に持ち帰って、毎晩実習でクタクタで眠たい目をこすりながら書いた。
いま考えれば指導員の先輩も毎日5枚のレポートをよく添削したものだ。
ちなみに筆者が指導員になったとき、手書きレポートを廃止してPCで週報形式にすることを課長に提案したら二つ返事でOKをもらい、僕の手書きレポートという汗と涙の結晶っていったい何だったのだろうと思ってしまったのはここだけの話にしておいてほしい。
そんな毎日の繰り返しのなか、唯一の心の癒しだったのは同期3人で週末に行く温泉だった。
工場の周辺には温泉が多く、土日の夜に同期3人でいろんな温泉に行った。
そこでの話題はそれぞれの課での研修のことだ。
他の2人もそれぞれの現場実習で同様に揉まれていた。
露天風呂にて夜空に輝く星を見ながら、お互いが「今週はこれがつらかった」「先輩に怒られた」などとフル〇ンで愚痴を交わし、「まあ来週もがんばろうか」と希望も分け合った貴重な時間だった。
精神的つらさを分け合う同期がいなければ、鬱になって辞めていたかもしれない。
それほど同期の存在は大きかった。
……
さて、思い出話が長くなってしまったが、現場実習で特につらかった点をピックアップしたので、さらに陰鬱な気分を味わいたい人は読んでほしい。
ちなみに、つらかった現場実習であったが、いくつか学びもあった。
現場実習での学びはその次に記しているので、そちらに飛んでいただいてもかまわない。
とりあえずここまでをまとめると……そうだな……
「現場実習はしんどい」
これに尽きる。
工場現場実習での学び
こんな感じで毎日つらいことがあり、日曜日の夜は毎回憂鬱だった。
毎日仕事が終わると「あと〇回行けば週末」ということだけ考えていた。
しかし、なかなか体験できない経験だったことは事実で、いくつか学びもあったので紹介しようと思う。
現場仕事はつらい
結局それかい、しんどい思いして結局それかい、とのツッコミが聞こえてきそうである。
もちろん現場実習をやる前から現場のお仕事っていうのは体力的にきつい仕事なんだろうなということは想像ついてたし、実際その通りだった。
しかし「現場仕事」と一括りにした仕事の中には様々な作業があり、大変さの程度も種類も異なるのである。
その後、筆者は現場の作業者に指示をする生産管理の業務を担当したが、たしかにそれぞれの作業のハードさや危険性を身をもって知っていたおかげで、ムリな作業をさせることはかなり少なかったと思う。

まあ3か月も実習しなくても分かるだろってことですがね。。
わからないことを正直に伝えることも大切
また実習を通して実感したのは、教えられている側がわかっているかどうかは教えている側もよくわかっていないということだ。
教えられている側が「ちょっとよくわからないなぁ」って思っていても、教えている方はそんなこと気づかず、当然わかっているものだと思って進めていくということがしばしばある。
のちに逆の立場(教える側)になって実感したが、
「返事は良くても実際はあまりわかっていない」
とか
「分かっているような分かっていないような表情だけど、『質問ある?』と聞くと『特にないです』と答えるから分かっているのかな」
とか、教えている側も経験が浅いとなかなか相手の理解度を読み取るのが難しいのだ。
筆者も現場実習中に作業リーダーに一度ひどく怒られたことがある。
「分からないなら恥ずかしがらずにちゃんと分からないって言え。新人なんだから分からないのは当たり前だ。中途半端なまま仕事して仲間をケガさせるのか」
これは本当にその通りである。
新人の皆さん。
現場実習に限らず、分からないことは「分からない」と恥ずかしがらずに指導員に伝えよう。
そんなことができるのも新人のうち。
言い出せないまま過ごしてしまうと、いつか自分だけでなく仲間が大ケガをしますよ。
パレートの法則
おそらくパレートの法則という名前を聞いたことがない人はいないだろう。
経験則の一つで、「組織の成果の80%は、組織のメンバーの20%から生み出されている」というような意味である。
現場実習ではこれが如実に表れていた。
いろんな人といっしょに作業をしたが、
- 空き時間でも自分で仕事を探して上司に指示されずともどんどん進める人
- 全体の動きを理解していて少しでも全体効率が良くなるように考えて仕事する人
- 言われたことは言われた通りにきっちりやるが、それ以上の仕事はしない人
- 自分の仕事で精一杯で、ほかの人の仕事や全体の流れが分かっていない人
- 言われたこともまだまだ満足にできない人
など様々な人がいた。
そして、全体の進捗を左右していたのは、10人のうち2人いるかどうかの「全体を理解して自分で仕事を生み出せる人」であった。
これには2つの意味がある。
1つはもちろん、こういう人たち個人のパフォーマンスが圧倒的に優れているということである。
同じ時間だけ同じ作業をさせたら、圧倒的に成果物に差が出てくる。
そしてもう1つは、こうした人が10人のうちの残り8人に適切な指示を出せるかも重要ということである。
いくらトップ層のパフォーマンスが高いといえど、体は1つしかなく、彼らが費やすことができる体力や時間という資源は有限である。
それよりも「言われたことはきっちりこなす」人たちに、どれだけの指示をできるかが組織全体のパフォーマンスを左右するのだ。
人は感情で動く
現場実習中、いろんな人が現場の作業員の人に仕事を頼む場面に出くわした。
たとえば「今度〇〇の試験に協力してほしい」「安全のため来月から△△というルールを運用したい」などだ。
仕事なので頼んだらみんな協力してくれるのだが、ぶつぶつ文句を言いながら仕方なしに協力するか、あるいは「よっしゃ!いっちょやったるか!」と積極的に協力して「〇〇だったらこういうアイディアもあるんじゃない」と言ってくれるかは、多分に感情論である。
「〇〇さんの頼みなら協力したろうか」か「なんでこんなめんどくさいことせなアカンねん」ってなるかは感情の左右するところが大きい。
これは貴重な学びだった。
大学の研究では論理的かどうかが一番重要である。
論理的に筋が通っていれば「そうだよね」と相手を納得させられる。
しかし「仕事」は「人間」がするものである以上、「人間の感情」の影響抜きでは考えることはできない。
論理的であることも大事だが、相手を尊重する誠実な姿勢もそれ以上に大事であることを学んだのだった。
工場現場実習の意義とは
工場での現場実習ルポはどうだっただろうか。

みんな熱意に燃えてるかな?(ゲス顔)
現場実習を実施する意義とは、筆者が「学び」の項で記したようなことを気づかせる、腹落ちさせることにあるのだろうが、どの程度の「気づき」を得られるかは人それぞれである。
筆者が記したことなんかより多くのことを学んでくる人もいるだろうし、無為に過ごす人もいるだろう。
どうせ参加するのであれば、筆者の記事を読んで筆者よりも多くのことを学び、時間を有効にしてほしい。
最後に。
本当につらくなったら無理してはいけない。
心を壊してまでやる仕事なんて世の中にはないのだから。
このあと同じ工場で生産管理の仕事をした経験を記した記事です。
新入社員時代の給料も公開しています。
就活での工場見学について書いた記事もあります。学生や就活生の方はこちらもご覧ください。
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