今回はJapan Gold社のプレスリリース(2021年2月23日)からです。

Japan Gold社はカナダに上場されている会社で、日本での金探鉱を実施している会社です。
北海道や九州に探査鉱区を持っており、そこで探鉱活動を実施しています。
Japan Gold社とBarrick Gold社の関係
Japan Gold社は2014年から日本で探鉱活動を実施していましたが、2020年2月にBarrick Gold社と組んで探鉱活動を行うことになりました。

当時保有していた30プロジェクトのうち28個について、Barrick社が2年間の探鉱資金を出資し、そのうち有望だと認められたものについては追加で3年分の調査資金も出資するようです。
これらのプロジェクトはすべてJapan Goldが主導して調査しますが、Barrick社がいつでも主導できる権利を有してます。
さらに調査が進み、最初の経済性評価(PFS: Pre-Feasibility Study)が完了したプロジェクトについては、Barrcik社が51%の権益を獲得します。
この中でもさらに有望で、BFS(Bankable Feasibility Study)まで進んだプロジェクトについては、Barrickの権益は75%まで高まります。
つまり調査資金を提供する(=金鉱山にならなければ資金はおじゃんになる)見返りに、金鉱山になった場合は権益をもらいまっせという契約です。
投資ですね。
そして今回のプレスリリースは、2021年分の探鉱予算がBarrick社に認められたというものでした。
Barrick社は400万USD(≒4.2億円)を拠出するようです。
Japan Gold社の探鉱活動の内容
上で述べた2年間の探鉱プログラムを仕上げる計画になっています。
29プロジェクト(2020年2月以降に追加取得した模様)の1,889km2の鉱区に対して、岩石サンプルの採取や金溶出試験、重力探査などを実施するようです。
このうち地化学探査(BLEG: Bulk Leach Extractable Goldやrock float sampling)は73%の鉱区について終了しており、また物理探査(重力探査 gravity sampling)は南九州のプロジェクトの51%が2020年までに終了しているようです。
サンプリングや試験は2021年7月までに完了させ、評価やプロジェクトの優先付けを2021年11月までに終了させる見込みとのことです。
というわけで、2021年末頃までには何かしらの結果が報告されそうですね。
日本で金鉱山は見つかるのか?
2020年の探鉱においても、いくつか金の濃集が確認されるなど、有望なデータが出ているようです。
しかし「鉱山」となるには、数か所の有望な点データがあるだけでは難しいです。
まだ2年間の最初の探鉱プログラムですので、この調査結果をもとに、最も有望だと推察されるところで2022年以降に試すい活動などを大量にやっていくのではないでしょうか。
つまり「鉱山」に結びつくかどうかはまだわかりませんし、なったとしても当面は先のことでしょう。
第2弾調査は3年間ということですので、その後のPFSやBFSの期間も入れると、少なくとも5年は先の話になると思います。
一方で、Japan Goldのホームページにある、なぜ日本で探鉱活動を実施するのか(Why Japan)というページが興味深いです。

日本の鉱山は70年代・80年代にほとんどが閉山しましたが、鉱山が操業していたということは当然探査もされつくしていたのかと思っていました。
しかし考えてみると、それは当時の技術での探査の話で、「日本には金はない」という固定観念で諦めていただけなのかもしれません。
この「常識」に対して、Japan Goldは
Underexplored terrain with an absence of competition
(競争がないため探鉱が実施されていない地域)
と日本を評価して
First mover advantage has provided access to the best available properties
(最初に行動した者が最良の資産を手に入れられる)
としています。
世界的には新たな金鉱山の開発は、奥地化・深部化したり、政情が不安定な国や環境問題が懸念される地域など、難しい条件のプロジェクトが多くなると言われています。
地図を見るとJapan Goldの鉱区は北海道や九州の山奥に位置してそうですが、海外の鉱山は標高ウン千mのところや砂漠のド真ん中にあったりするわけで、それに比べたら全然大したことないと言えます。
これまできちんと調査されていないだけで、(世界標準からすると)アクセスしやすい地理条件に、有望な鉱床が見つかり、しかもそれが政情が安定している日本にあるとなれば、鉱山開発のリスクは低いのではないでしょうか。
そう考えると、世界一の産金会社Barrickにとっては、今回の4億円は良い投資だと思いました。
実際開発に移るときは、環境へどの程度影響があるのかと、地元住民の理解が得られるかがカギとなりそうな気がします。
鹿児島県で菱刈鉱山を営む住友金属鉱山や、北海道で峩朗鉱山を営む太平洋セメントなどと組んで実施するなんて可能性もあるかもしれません。
住友財閥(別子銅山)や古河財閥(足尾銅山)が鉱山開発を機に多角化していったように、鉱山ができれば付帯していろんな産業が興りますので、地元経済にとってはチャンスじゃないかなと思います。
とりあえずJapan Gold社の続報を楽しみにします。
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